スーツの着こなし術

Yシャツが見えるのは正解?知れば変わるスーツ袖丈4つの話

スーツの袖丈の一番良い長さは?

初めてオーダーをして頂いたお客様から、「スーツの袖丈からYシャツが見えた方が良いのですか?」と聞かれました。
私は「一般的には1~2cm見えた方が、キレイに見えると言われています。しかし、90年頃のソフトスーツはあえて長くするのが流行りだったのです。」とお答えしました。
お客様からは「仕事で着るのでシンプルかつスマートなデザインにしてほしい」とのご要望でしたので、1.5cmYシャツが見える袖丈の長さをご提案したところ、イメージ通りのスーツになり大変喜んで頂けました。
このような事もありますが、もちろん袖丈だけで全体の印象が決まる訳ではないです。しかし、ご自身のイメージと周りからのイメージが違うのは避けたいですよね。

そこで、今回はスーツの袖丈の話をします。これを読めば今着用しているスーツはあなたに合っているのか、または「あなたがどれくらいの袖丈の長さにするべきなのか」これを知ることができます。
あなたが今着用しているスーツはどうでしょうか。「こんなスーツを着たい」といったイメージからあなたのスーツ姿が離れていたとしても、そのイメージに近づけるための方法もお話しするので確認してみて下さい。

袖丈の長さはどれくらいが良いのか

先ほど、Yシャツは1~2cmジャケットの袖から見えるのが一般的とお話しました。これはスマートに見えるのもそうですが、実はジャケットに皮膚の汚れが付かないようにという意味で、「一般的な長さ」と称して私はお伝えしました。
では全員が同じ長さで良いのか。いいえ、それは違います。Yシャツの袖丈、Yシャツのカフスの大きさ、などで理想的な袖丈の長さは変わってきます。
もちろんジャケットの袖丈は腕の長さに合わせるのが良いですが、持っているYシャツと合っていなければ意味がありません。
必ずYシャツとの兼ね合いも考えましょう。

袖丈の長さはYシャツの長さで決まる

Yシャツの袖丈 これくらいがちょうど良い

スーツ袖の長さが一般的な長さだとしても、着用しているYシャツが短ければジャケットからYシャツが見えることはありません。逆に長ければ、袖から出すぎてしまいます。
つまりスーツの袖の長さは、持っているYシャツの袖の長さによって見え方が全く違ってしまうということです。

では、「Yシャツを今まで購入したことがない」もしくは「色々な場所でYシャツを購入しているので、それぞれシャツの袖丈の長さが1~2cm違う」この場合はどうすればよいのでしょうか。
答えは「手首のくるぶしにジャケットの袖丈を合わせる」ことです。
手首のくるぶしに合わせれば、袖の長いYシャツでも2~3cmくらい覗く程度で済みます。借りに短い袖丈のYシャツを着用したとしても手を曲げた時にYシャツが1~2cm程見えるので、不格好に見えることはありません。
ですが、一番良いのはYシャツの袖丈が同じ長さのものを何着か用意し、ジャケットをそれに合わせて購入することです。
同じ袖丈のYシャツが用意できない場合は、着用回数が一番多いYシャツに合わせば問題ありません。

スーツは袖丈の長さによって見え方が違う

冒頭でお話した袖丈の長いソフトスーツのように、流行りによって袖の長さは変わってきます。
流行で変わるということは、それだけデザインが着用時の見え方に影響するということです。
では長さによってどんな見え方をするのか、それについてお話しします。

長めのスーツ袖丈

長めの袖田の場合はこれくらいが良い

長めの袖丈は袖口を絞ることにより、手が長くスリムに見える効果があります。
しかし、スーツではあまりオススメしません。
なぜなら、日本人は清潔感のある人を好むので長いと自分のサイズもわからないのかと、周りに不快感を与えてしまうことも…
だからこそ、多くのテーラーがYシャツは見えた方が良いとオススメするのです。
では長めが好きな人、もしくは人とは違う印象にしたいオシャレさんはどうすれば良いのか。
それはスーツとしてではなく、Tシャツやセーターと合わせてジャケット単体を着こなすようにすることです。
この場合は裏地のないアンコン仕立てのジャケットを、羽織るように着るだけでオッケーです。
私服やジャケパンに良く合い、大人の男にしか表現できない格好良さになります。

*アンコン仕立てとは、裏地・芯地・パッドを最小限にして仕立てたスーツ。簡単にいうとカーディガンみたいなイメージ、かなりカジュアル(気軽)な印象になる。

短めのスーツ袖丈

スーツの袖丈 短め これくらいがちょうど良い

短めの場合は腕時計が見えやすく、Yシャツも見えるので爽やかな印象を与えます。
一般的にはYシャツを少し見せることが良しとされているので、スーツでは短めを好む方が多いです。
しかし、あなたが私服でも短めを着用するなら注意が必要です。なぜならあまりにも短いと袖からシャツが見えすぎます。見えすぎるのは不格好なのです。
20代であれば問題ありませんが、30代後半以上の方は若々しく見えすぎるので、あなたに合っているか周りから意見を聞いて判断してください。

スーツの袖丈は用途によって長さを変えるべき

座って仕事をしていることが多い、もしくは立って仕事をすることが多いのであれば、その用途に合わせて袖丈の長さは変えるべきです。
何故なら、長すぎれば擦れることが多くなり、短すぎれば手を曲げた時にYシャツの見える範囲が多くなります。
あなたがスーツを着る際に取る一番多い行動はなんでしょうか?
シチュエーション毎にまとめるので、確認してみてください。

座って話をすることが仕事で多い方

もしあなたが商談などで座って話をすることが多いのなら、袖丈を少し長くしても良いかもしれません。
机に手を置くと、肩周り(アームホール)に袖が引っ張られてYシャツが見えやすくなります。これは電車でつり革につかまる時と同じです。
長くすることによって、袖が引っ張られてもYシャツが見えすぎないようにすることができます。
その分歩いている時はYシャツが隠れ気味になるので、注意が必要です。

※アームホールを小さくすれば袖丈を変える必要はないのですが、今回は袖丈について話をしているのでアームホールについては別の記事でお話しします。

デスクワークが多い場合は?

デスクワークが多いのであれば、袖丈は短い方が良いです。理由は、パソコンや机との摩擦でスーツが傷ついてしまうからです。
しかし、一番良いのは着用せずに作業をすることです。わざわざ袖丈を短くしなくてもYシャツで作業をするだけで、ダメージはグッと減ります。
業務中は椅子などにかけて外出の時だけ羽織るようにすることをオススメします。

セミナーなどで人前に出ることが多い

もし人前に出て話をすることが多いのであれば、袖丈は少し短くしても良いかもしれません。
なぜなら、基本的に人はジェスチャーを加えながら話をすることが多く、聞いている側は自然と手の周りに注目が集まります。
その際、袖丈が短い方が立っている時にはYシャツが見えるので誠実な印象になります。
しかし、短い袖丈が良いと言いましたが1~2cmシャツが見える程度にしておきましょう。それ以上短いのは、逆にシャツが出すぎて少し不格好に見えてしまうので気を付けてみてください。

今着用しているジャケットが既に合わない場合は?

ここまで読み進めて、スーツの袖丈で自分に合う長さはどれくらいなのか理解できたかと思います。
では、その長さを手に入れるにはどうすれば良いのか。ここまで読んでくれたあなただけにお伝えします。
二通りあり、1つは「着ているスーツをリフォームする」もう1つは「プロにとりあえず聞いてみる」です。
順番に説明していくので、そのまま読み進めてください。

着ているスーツをリフォームする

スーツをリフォームする為のミシン

これは今着用しているスーツの袖丈が合っていないと自分で思っている方限定の話です。
もし、まだ自分の用途やイメージが分からないという人はここを飛ばすことをオススメします。
仮に読んで実行したとしても、理想通りの袖丈にするのは難しいからです。

さて、スーツのリフォームとは何か?これは家と一緒で「今あるスーツを直してあげる」ことです。もしあなたのスーツ袖丈が長い場合は、これに当てはまります。
3.5cm以下の詰めであれば、3000円くらいでできるのでスーツを買い直すよりお得です。しかし、それ以上詰める場合はボタンの位置も変えないといけないので価格もあがり、デザインも少し変わってきます。
本当にあと少しYシャツの見える部分を増やしたい!という人にオススメな方法です。

プロにとりあえず聞いてみる

プロに聞いて自分に合っているか診断してもらう

これは着用しているスーツが自分に合っているのかわからない、もしくは自分の用途やイメージする見られ方に合う袖丈の長さが分からないという人だけにオススメの話です。
もしあなたが、プロに聞かなくても自分のスーツのことは分かる。と思ったのであれば読み進めてもあまり効果は得られないと思います。是非1つ目のリフォームを検討してみてください。

あなただけに合うスーツを注文する上で重要になるのが、どんな用途で使うのかです。プロのテーラーは感性だけで似合う似合わないを決めるのではなく、体型や骨格の特徴、顧客の好きなデザイン、似合う色など、しっかりとした理論に基き提案をします。
それを伝えることにより、あなたの想い描く「こんなスーツが欲しい」に近づいていきます。雑誌に載っているようなスーツ、芸能人が着ていたスーツ、なんでも良いので店頭などでテーラーに聞いてみましょう。
私もお客様にお越し頂く手間を省くために、SNSや電話で質問を頂きます。「聞くことでぼんやりしたイメージが具体的なイメージに変わった」とお声を頂くこともあります。
自分の仕事や恋の悩みを誰かに聞いてもらうだけで気持ちが楽になり、どうすれば良いのか方向性が見えてきますよね?それと同じ感覚です。是非、試してみてください。

まとめ

一般的な袖丈の長さから、それぞれの長さによる見られ方、どれくらいの長さにすると良いのかをお話させて頂きました。
一番大切なことは「こんなスーツを着たい」としっかりとしたイメージを持つことです。美容院で髪を切ってもらう際にとにかく格好良くしてください!と伝えても美容師さんのイメージとあなたのイメージする格好良さは違うので、イメージ通りの髪型になるとは考えにくいですよね?
スーツも一緒です。よりイメージが具体的であればあるほど、完成した時の満足度は上がります。それを膨らまし、具体的なカタチに近づけるのがフィッティングテーラーの技です。

これを機にあなたの「こんなスーツを着たい」を考えてみてはいかがでしょうか。