今回はスーツの寿命の話です。スーツにも食品の賞味期限と同じで、着用期限があります。
「自分のスーツはまだ着れると思う」実はこの思い込みが一番危険です。
本当は着用期間を過ぎているのに着ていて、周りからは不快に思われているなんてことも・・・
今回はスーツの平均寿命よりも寿命を延ばす方法、更にはどんなスーツをどれくらい持っていると良いのかをお教えします。
これを知れば自分のスーツの期限は大丈夫か、はたまた用途ごとのスーツの選び方まで分かります。上手に楽しく、スーツを着まわしましょう。
スーツの平均寿命
スーツの平均寿命は夏物は3年、冬物は4年と言われています。これは最低限の品質はここまで保てるように定められている、「耐用年数」からきています。
しかし、この数値は買ってから着なくなるまでの期間であって、壊れて着用できなくなるといったケースは考慮されていません。
逆に、保管方法や着用間隔、アフターケアをしっかりとおこなっている人であれば、5年以上スーツを保たせることも可能なのです。つまりその人の着用方法で、寿命は大きく変わるということです。
着用回数に表すとどれくらい?
保管方法などによって個人差はありますが、スーツの着用回数は240回程度と考えられます。
この着用回数を超えてくるとシワも戻りずらく、脇やひざの裏が擦れて裏地が見える!なんてこともあります。
この240回という回数は週5日勤務のサラリーマンが毎日連続で着用した場合、約一年間でダメになるということを示しています。
ちなみに連続でスーツを着用することはお勧めしません。連続で着用するということは、お休みの日にしかクリーニングに出せないことになります。
しかもクリーニングから返ってきたら、またすぐに着る。そのようなサイクルで着用していると、1年と持たずにスーツがダメになってしまうこともあります。
1年以上着用している人が絶対に確認するべき3つのポイント
もしあなたが、1年以上スーツを着ているのであれば必ず確認してほしいポイントが3つあります。
そもそも着用できなくなることは、破けるまでではありません。スーツを着る人全てに共通する理由は、「見栄えを良くする」ことです。
会社に言われているから。社会のルールだから。と思った方も一緒です。
会社が顧客から自分の社員を見て見栄えが良いと思われるのが、「スーツ」だと思っているから着用を義務付けています。
この見栄えが良く無いと思われた瞬間が、スーツを着用できなくなる状態です。
以下で、着用を避けた方が良いスーツの状態を3つお話します。
ジャケットの背中のシワの数
意外と多いのがジャケットの背の部分のシワが多いことです。ジャケットを着て座る時間が長い人は、背中に横シワが出来易いです。
購入当初は復元力があるので気になりませんが、長く着用していれば電車に座ることで出来るシワすら戻らなくなります。
もし今着用しているあなたのスーツの腰にシワが1本、背中に斜めなシワが3~4本あるとしたらそれは既に赤信号です。
家を出る時、前は確認するかもしれませんが、後ろまで確認する人は少ないと思います。羽織る前にジャケットの背中を確認することをオススメします。
着丈の裾がヨレている
最近多いのが、着丈の裾がヨレてしまっているジャケットです。
原因はオールシーズン着用できるように、背抜きのものが多くなったからです。
ヨレていると、「仕事で着るスーツを一着しか持っていないのかな?」と思われてしまうかもしれません。
※背抜きとは、背の部分の裏地を減らし、通気性を良くしたものです。
裏地は本来、表地の摩擦によるダメージを抑えるために考案されたもの。背の部分に裏地のあるジャケット(総裏)は一番デザインが崩れにくいです。
オールシーズン用の生地だとしても、衣服である以上「夏用・冬用」と分けてあげましょう。
ヒザの裏のシワ
通勤が車の方、もしくはデスクワークの方に多いのがヒザ裏のシワ。ヒザが曲がった状態が長くなれば、シワはできてしまいます。
スラックスのデザインがピタッとさせたものを好む人は特に出来易いので注意が必要です。
もし、あなたが座るのが多い仕事なのであればスーツのデザインをゆったりとしたものに変えるべきです。
それでもスマートなスラックスを履きたいのであれば、今日から保管方法は変えるべきです。後ほど記載してありますので、そのまま安心して読み進めてください。
スーツの寿命を縮める4つの原因
スーツは消耗品です。なぜならどんなに大事にしても壊れる時はきます。それでもできれば長く着用したいものです。
そんな大事なスーツの寿命を知らずに縮めてしまう原因が4つあります。もし一つでも当てはまった方は、改善すれば更に長くスーツを着用できます。是非確認してみてください。
クリーニング回数が頻繁
クリーニングはシワも取れて、汚れも落としてくれるからなるべく多く出す!こう思っている人も多いのではないでしょうか?
実はこれ、大きな間違いです。
頻繁にクリーニングへ出すということは、強いプレスによる傷みや油分を落としすぎてしまい、生地の質を低下させる原因になります。
生地に動物の毛を使用している場合は、毛も息をしているので尚更痛み易いです。体を洗いすぎれば、人も痛いですよね?それと一緒です。
ではどうすれば良いのか?
答えは衣替えの時に一度出す、要は半年に一度出すだけで良いのです。
すると、生地の風合い・質を落とさず、2~3年と長く着用することができます。
クリーニングの回数に気を付けるだけで、驚くほど長く着用することができますよ。
例外としてあまりにも大きなシミになった場合だけは、クリーニングのプロにお任せしてください。
スーツを連続で着用してしまう
意外と一つのスーツを連続で着用することは多いのではないでしょうか?
特にお気に入りのスーツだと、気づいたら着用回数が増えているなんてことも。
一日着用して汚れが付着したスーツ。一日休む暇もなく、次の日も次の日も着用したらヨレの原因にもなりますし、何より傷みが早くなります。人も週7日連続で働けば疲れるのと一緒です。
スーツは必ず1日着用したら最低でも2日は休ませてください。シワになる量も、次に着る時の風合いも変わってきます。
出来れば一週間に一回が理想ですが、いきなりその量のスーツを揃えるのは難しいです。
せめて1着2休を守れるようにして、スーツを長持ちさせましょう。
1日着用しても、そのまま放置
あなたは帰宅してスーツを脱いだとき、ハンガーにかけクローゼットにそのままスーツを入れていませんか?もし入れていると思った方は、今日から直してください。
なぜなら、一日着用したスーツには1.5Lもの汗と汚れが付着しています。必ずクローゼットから出して1日は風を通してあげてください。
また、一日着用した後はブラッシングを心かけてください。今、毎日はやっている暇がないと思いましたか?安心してください。
毎日やる余裕がない場合は、除菌効果のある霧吹きなどで陰干しをするだけでシワが消えます。
そして、週末の朝にでもゆっくりとブラッシングやアイロンで、その週についたシワや汚れをリセットしてあげてください。
私も時間がない時はやっているので、オススメです。
激しい運動をしてしまう
ごく稀にいらっしゃるのですが通勤時、ダイエット変わりに駅まで走る方がいます。
これはNGです。スーツで走るのは緊急性があるときだけにしてください。
なぜならスーツは、運動している状態の人間を想定して製作していません。
座る・立つ・腕を上げる・しゃがむなどの基本的な動作を元に製作してます、
これから運動をしようとするとき、スーツで行きますか?いいえ、スポーツ用の衣服に着替えるはずです。
もし、それでもスーツで走ることをどうしてもやめたくない!という人は、選ぶ生地をジャージーのスーツにしましょう。
ジャージーとは、伸縮性があってとても動きやすい編み方をした生地のことです。その動きやすさから、私服としても着用できる優れもの。
しかし、大きな欠点があります。それは「カジュアルなスタイル」に見えてしまうことです。
製作技術が上がり、ジャージーとは思えないジャケットの仕上がりにはなっていますが、それでも通常のスーツよりもカジュアルに見えます。
大事な会議や商談があるときは、着用を避けた方が無難です。
スーツの寿命を延ばすのに特に重要な保管方法
さて、座ることが多い方がスマートなスラックスを履きたいのであれば、今日から「保管方法」を変えるべきと初めの方にお話したのを覚えているでしょうか?
お待たせしました。どんな保管方法にするべきかお伝えします。
これは、スマートなシルエットにしたい方だけに向けたお話ではありません。
どんなスーツでも共通して、おこなうべき方法です。スーツを着用する人は必ず確認してください。
クローゼットに入れる前に確認すべき3つのポイント
先ほどスーツは1着2休で着まわす、というお話をしました。
その2休の間に、スーツ生地本来の持つ力で、自然にシワが伸び、型崩れを防ぐことができます。
しかし、ただスーツを休ませるだけでは意味がありません。しっかりとスーツが安心して回復に専念できる状態にしてあげる必要があります。
私達も固い床より、ふかふかのベッドか布団がある方が良いですよね?それと同じです。たった3つなので是非確認してみてください。
ハンガーはそれぞれにかける
ハンガーと聞くと、多くの人が三角形のものをイメージすると思います。実はジャケット、パンツと別々にハンガーがあるのです。
面倒だからジャケットとパンツを一緒にかける。これは今日で卒業しましょう。
「ジャケットのハンガー」
ジャケットのハンガーには厚みのあるものを選びます。これにより肩崩れを防止できます。
注意するべきは、ジャケットのハンガーだけは「大は小をかねない」ことです。
ジャケットよりも大きな肩幅のハンガーは逆に肩崩れを起こします。購入する際には自分の肩幅よりも小さなものを選びましょう。
ちなみにプラスチック製よりも木製の方が吸湿性があり自然と汗を吸ってくれるので、あまりアフターケアをする時間が無い人にはオススメです。
「スラックスのハンガー」
スラックスをかける時は、クリップ付きのハンガーで裾の方を上にして吊るします。すると重みで自然とシワが伸びます。
スラックスを半分に折りたたんでかけるハンガーもありますが、折りシワがついてしまうのであまりオススメしません。必ずジャケットとは別々でかけるようにしてください。
スーツとスーツの間隔
クローゼットにスーツを入れる際、スーツとスーツの間隔を詰めて入れてしまっていませんか?
あまりにも詰まっていると、取り出すときや収納するとき、もしくは他のスーツを動かした振動で摩擦が発生します。
常に摩擦が発生するということは、傷みを進行させる原因となります。これはスーツにとって最悪の状態です。
出来ればスーツとスーツが触れない間隔を空けて保管する必要がありますが、そんな大きなスペースを用意できるとは限りません。
その場合は最低でも肩と肩の部分で1~2cmの間隔を空けてください。もしこれができないのであれば、保管スペースを少し広くするか、保管場所を変えることをオススメします。
それほど保管時の間隔は重要なのです。
シーズンオフによる長期保管の場合
クリーニングから返ってきたスーツ。包まれているビニールに入れたまま保管してしまっていませんか?実は一番やってしまう人が多く、一番やってはいけないことです。
なぜならビニールには通気性がありません。空気が入らないということは、生地の呼吸が止まり風合いを損ないます。必ず返却次第、ビニールから外してください。
購入時にもらうスーツカバーで保管し、月に一度風を通してあげれば次の衣替えでも気持ちよく着用することができます。
天然素材毎のケアポイント
ウール、コットン、リネン、シルク、とスーツに使用される天然素材は様々です。
この天然素材は「吸湿性」「肌へのなじみ」がとても魅力的です。化学繊維にはない上質な風合いを醸し出しますが、取り扱いには注意が必要です。
ご自身が着用しているスーツの素材はどれに当てはまるでしょうか?
持っているスーツの内ポケットにあるタグから素材を確認して、ご自身にあったケアポイントを読んでみてください。
ウール(羊)
「ポイント1 防虫剤」
長期保管する場合は防虫剤を必ず使用してください。動物性繊維は虫の大好物です。
久しぶりに着用する際に穴が空いていたら、とても悲しいですからね。
「ポイント2 ブラッシング」
着用後は毛並みが乱れています。豚毛など毛足の長いブラシで上から下と整えてください。
コットン(綿)
「ポイント1 雨に濡れた場合」
水分の吸収がものすごく良いので、かなり重くなります。
干す時は吊るしてしまうと重みで形が崩れることがあります。平らにして重みが一点に集中しないようにしましょう。
リネン(麻)
「ポイント1 長時間座った場合」
リネンは長時間座ると特にシワが目立ちます。必ず着用後は高温アイロンなどでシワを伸ばことを癖つけましょう。
「ポイント2 保管時の距離感」
カバンなどで擦ると、摩擦でケバだち白っぽくなることがあります。なるべく他のものとは離すようにしてください。
シルク(絹)
「ポイント1 紫外線に弱い」
基本的にスーツは変色防止のため、陰干しですがシルクはとくに紫外線に弱いので蛍光灯にも注意してください。
一年中蛍光灯が付くとこでは、保管を避けるようにしてください。
「ポイント2 虫がよりやすい」
ウールと同じく、シルクも虫がつきやすいです。必ず防虫剤を使用して保管してください。
実は使わなくても着れなくなることがある
ここまでの話から保管していれば、必ず壊れない訳ではないのがお分かり頂けました?スーツは1着2休もしくは一週間は休めてほしいとお伝えしましたが、必ずしも壊れない訳ではありません。
余裕のないスペースによって発生する保管やダニ・細菌の混入により、寿命は縮んでいきます。
本当に長く着用したいのであれば、定期的なメンテナンスを怠らないことです。
長く着用するためにスーツ選びで気を付ける3つのポイント
保管方法は分かったけど、余計にどのスーツを選べばいいのかわからなくなった・・・そんな方もいるのではないでしょうか?スーツを選ぶ時は自分の好みもそうですが、長く着用したいのであれば選び方も見直してみてください。
以下に気を付けるべき3つのポイントをまとめてお話します。
タイトなサイズ感の罠
「細くみせたい!」という人は少なからず多いと思います。そんな方が選ぶのは基本的にピタッとしたタイトなシルエット。
実はこれ、スーツの寿命を縮めています。プレス線が消えて、柄も伸びます。
ゆとりの無いサイズは生地を伸ばしてしまい、どんどん傷めていきます。必ず適度なゆとりのあるものを選びましょう。
また、腕やパンツのスソ巾にゆとりがありすぎるのも注意が必要です。
歩いている時に擦れて摩擦が起こり、切れてしまったり変色してしまう原因になります。迷った時はプロに聞くのが一番です。
現状のスーツの数は妥当?平均的な保有数
スーツの基本的な保有数は4~5着と言われています。
これだけあれば、一週間に一着ずつ着用できるので、上手く着こなせば5年は保てます。
もし、2~3着で十分と思った方はその分、今のスーツが早くダメになることは覚悟してください。
お気に入りだからあなたは着れると思っていても、ヨレていたり、伸びているスーツは周りからは見ていられないと思われているかもしれません。
しかし、いきなり4~5着を揃えるのは難しいです。だからこそ今のスーツを上手に着こなす必要があるのです。
お節介知識 シューズ編
スーツの保有数が多くても、靴が少ないという方も多いのではないでしょうか?実は靴も休ませる必要があります。最低でも1日履いたら1日は休ませてあげましょう。
さらに、すぐに下駄箱にしまうのはNGです。必ず1日は玄関に出しておきます。外で少しでも風を通せるなら尚良しです。
要は最低でも2足は必要ということです。必ず休日に磨くことを忘れてはいけません。そうすれば1~2年は綺麗な状態で履くことができます。スーツだけでなく、靴も周りからは見られるので気配りを忘れずに。
次のスーツを買う為にやるべき着こなし方法
どうしても気温が下がらない限り、スラックスとYシャツのみでいることが多くなります。
すると、スラックスばかりが紫外線を浴びて変色が起こり、ジャケットの色合いと合わなくなります。しかも見慣れている自分には感じずらく、他の人からはとても違いがわかり易いのです。
もし人と逢わずデスクワークが多い日なのであれば、スラックスではなく、チノパンなどと合わせるジャケパンスタイルにしましょう。
スラックスを休めてあげることもでき、コーディネートの幅も増えて一石二鳥です。
また、どうしても毎日スーツを着用しなきゃいけない場合は色合いの似ているスラックスをもう一つ購入しましょう。
これにより、スーツを一着を買うよりもコストを抑えることができ、変色も気になりません。
今ではツーパンツをスーツとセットで買えるので、活用しない手はありません。
二つの着こなし方法はあくまで、一時的な解決策でしかありません。
上手に着こなして徐々に着用できるスーツを増やし、長く着用できる状態にしましょう。
まとめ
長く着用するには「着数を4~5着に増やすこと」「保管方法を見直すこと」この2つが特に大切になります。
いきなり5着も揃えようとするから、費用が高く感じるのです。徐々に揃えて5着で着まわせるようになれば、1年に一回変えるよりも長い目で見ればコストを抑えることができます。
費用を抑えることができ、周りからも認められるスーツを長く着用できたら嬉しい限りですね。
是非、今日から意識してみてください!